2 意匠に係る物品の類否(第1段階)

現状においては「意匠に係る物品」の記載が部分意匠を含む物品全体の名称の記載しか許されていないため、従来の物品に関する類似概念を適用せざるを得ない。このため、当該要素においては、意匠に係る物品の用途・機能を判断し、物品の同一、類似、非類似という3つの結論が導き出されることになる。

しかし、上述したように部分完結型は、従来の物品概念では非類似物品となる場合でも揺動範囲に含まれる可能性がある。これは、部分完結型では全体物品との関連性が希薄だからである。そこで、部分完結型の保護を完全なものとするために以下の2つの方法が考えられる。

第1の方法は、「意匠に係る物品」の欄の記載方法を変更し、部分完結型に限って、米国のような「部分の名称」の記載を許す法改正を行うというものである。このような法改正が行われれば、部分完結型においては、この「部分の名称」は複数の物品を特定したものとして取り扱われることになり、その各物品の類似範囲を総合した類似範囲は広範なものになると考えられる。なお、部分意匠制度導入時において、米国のような「部分の名称」の記載方法が導入されなかったのは「部分の名称」についての新たなデータベースの構築に手間がかかるので特許庁がこれを拒んだためと聞いている。

第2の方法は、部分完結型と認定される場合には、例外的に物品の類似範囲を広く判断するというものである。この方法は、従来の物品の類似概念を維持しつつ、部分完結型のみ例外的に運用することにより実質的に部分完結型の完全な保護を実現しようとするものである。この方法を採るのであれば法改正を必要としない。現状においてはこの第2の方法を検討すべきであろう。しかし、この方法が採られる可能性は「意匠に係る物品」の欄の記載方法からみて、非常に小さいと考えられる。

(2006/2/13)


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