3 部分完結型

部分完結型とは、図1に示すテレビゲーム機用コントローラのように、破線で示されている物品全体と実線部分との関連性が弱く、実線部分(ジョイステック部分)が単独で完結しているものをいう。即ち、組み合わせるべき物品(図1の例で言えば、テレビゲーム機用コントローラのほかコンピュータのキーボード等であっても良い。)をあまり選ばないものをいい、全体物品への依存性が小さなものをいう。逆にいえば、実線部分が、物品全体から独立して把握でき、かつ付加的(即ち、他の形態に置換可能であるか除去可能である場合)であると認定できるものである。


図1

このような完結性の認定は以下の要件を備えているか否かで判断する。
第1に、実線部分の用途・機能が完結しているかを判断する。これを機能完結要件と呼ぶ。図1に示すコントローラのように部分意匠として実線で示されているジョイステック部分が独立した用途・機能を有し、部分意匠以外の破線部分の用途・機能に従属していない場合、その部分意匠に完結性を認めるのである。逆に、部分意匠として実線で示されている部分の用途・機能が、部分意匠以外の破線部分の用途・機能と共通し、相互に密接不可分な関係が認められる場合には、この部分意匠は機能完結要件を備えていないと判断するのである。

第2に、実線部分の全体の形態に対する依存性を判断する。これを形態完結要件と呼ぶ。即ち、部分意匠の形態が全体意匠の形態に依存しているか否かを判断するのである。具体的には、実線と破線の境界域に形態的に密接な関連性が認められるかという点に注目してこの判断を行う。実線が破線で示されている特定の形態の存在を前提にしているかどうかという点に注目するという意味である。

機能完結要件及び形態完結要件を共に備えている場合は、部分完結型と認定される。部分完結型は全体物品との関連性が希薄であるため、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載された物品と非類似の物品にも本来的には組み合わせることが可能である。


図2

部分完結型の揺動範囲は他の部分型類型と比較して広範なものになる。即ち、この分類に属する部分意匠は、後述する部分意匠の類否判断において、破線部分との関連性における「位置」に関し限定的に考えてはならないのである。従って、部分完結型においては、揺動説の結論は独立説と略同じ取扱になると考えても良い。但し、「大きさ」に関しては、その実線で示されている部分の機能等から、社会通念上、揺動範囲に含まれるか否かを決定することになる。例えば、ジョイステック部分は手で操作されるものであるから、その大きさにはある程度の限界が認められるということである。図2に示すようなコントローラはジョイステック部分が手により操作可能な大きさであり当該コントローラは揺動範囲に含まれる。

図1と図2に示すようなコントローラは、それぞれ全体意匠に対してジョイステック部分の位置、大きさ、範囲が大きく異なる。従って、要部説においては、図1の登録部分意匠が存在する場合、図2のイ号意匠(破線部分は実線で示されているものとする)は登録部分意匠と非類似であるという結論になるであろう。

尚、この部分完結型の部分意匠には、実線部分の形態がありふれているものは含まれない。即ち、当該部分がありふれている場合には、意匠法第3条2項の適用により登録を受けることができないと考える。部分完結型は、本来的に物品の全体形状とは乖離する傾向があるため、このようなものを特定の「位置」に設けることは当業者にとって容易であり法による保護価値を認めることができないからである。

(2006/2/11)

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