2 プロトタイプとしての具体的態様

特徴的な具体的態様は、その意匠の基本的構成態様を有する複数の公知意匠との対比によって認定される。これは、特徴的な具体的態様がプロトタイプ理論におけるプロトタイプとしての性質を有しているためである。すでに紹介したように、プロトタイプ理論は、概念が典型例を中心に体制化されているとする考え方である。例えば、コマドリは典型的な鳥といえるが、ダチョウは典型的な鳥ではない。コマドリは鳥のプロトタイプ(典型例)と多くの特徴を共有しているからである(1)。

コマドリを典型例とするためには、複数種類の鳥が存在していることが必要である。複数種類の鳥と対比することにより、コマドリは典型的な鳥となり、ダチョウは典型的な鳥ではないという判断を行うことができるからである。もし鳥が一種類しか存在しなければ、鳥の典型例という概念自体が成立しない。典型例とは複数の比較対象を必要とするからである。

基本的構成態様の分布範囲は、中心傾性を有していない台形状であることはすでに述べた。この中心傾性を有していない理由は、基本的構成態様は新規物品の場合でも認定することができるからである。形態の基礎的な特徴である物品の面と面との関連性は、他の公知意匠との比較を必要としないのである。

特徴的な具体的態様はプロトタイプ理論におけるプロトタイプとしての性質を有しているため、中心傾性を有する円錐状の分布範囲を有している。図1は、基本的構成態様に基づく類似範囲と、具体的態様に基づく類似範囲を示したものである。具体的態様に基づく類似範囲は、基本的構成態様の類似範囲よりも狭い。


図1

また、一つの意匠が複数の特徴的な(斬新な)形態要素を有する場合には、その斬新な形態要素毎に具体的態様を認定することができる。一つの意匠には、一つの基本的構成態様しか認定することができないが、一つの斬新な意匠には、複数の特徴的な具体的態様を認定することができる場合がある。

(2008/1/8)

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