1 具体的態様の定義

具体的態様は基本的構成態様を前提とする。基本的構成態様は物品の面と面との関連性であり、具体的態様はそれら面に具体性を与える形態要素である。

基本的構成態様と具体的態様は、いずれも形態要素である。基本的構成態様は形態の定義と呼べるものであるが、具体的態様は基本的構成態様以外の全ての形態要素が該当する。具体的態様が意匠の類否判断において問題となる場合は、その具体的態様が複数の公知意匠の具体的態様と比べて特徴的である場合である。特徴的な具体的態様かどうかという判断は、その意匠を見つめているだけでは把握できない。この点が他の意匠との比較によって把握するものではない基本的構成態様と大きく異なる。

両意匠の基本的構成態様は異なるが具体的態様は共通するという場合は原則として存在しない。上述したように具体的態様というのは基本的構成態様を具体化した形態要素だからである。従って、意匠Aの具体的態様を認定する場合に比較される公知意匠Bは、意匠Aが有する基本的構成態様を有していなければならない。意匠Aが有する基本的構成態様とは異なる基本的構成態様を有する公知意匠Cは、意匠Aの具体的態様を認定する資料として用いることはできない。

また、特徴的とされた具体的態様による視覚効果は、基本的構成態様による視覚的効果を凌駕する必要がある。例えば、同一の基本的構成態様を有する複数の公知意匠の部分的な形態を寄せ集めたいわゆる「寄せ集めの意匠」は、その基本的構成態様による視覚的効果を凌駕することができない。詳しくは後述するが、このような寄せ集めの意匠の多くは、創作容易性の問題以前に、公知意匠の基本的構成態様に基づく類似範囲に属しているため意匠登録を受けられないのである。基本的構成態様の視覚的効果を凌駕できないためである。

また、具体的態様は意匠の形態全体に対する視覚的効果を有していなければならない。意匠の形態全体に対する視覚的効果が期待できない場合には部分意匠の意匠登録出願が望ましい。

(2008/1/8)

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