5 基本的構成態様の分布範囲

基本的構成態様の分布範囲は、中心傾性を持たないため円盤状ではない。プロトタイプが円錐型であるとするならば、基本的構成態様の分布範囲は周縁の形が不規則な台地状ではないかと考えられる。基本的構成態様の分布範囲を図面に表現すると、図1のようになるであろう。


図1

この図は、形態の分布をXY座標平面上に表現し、また、Z軸方向に視覚的効果を示したものである。基本的構成態様の分布範囲が認められる領域においては、その視覚的効果が同一であるため、Zの値は全て同一になる。即ち、特定のXY座標にピークを持たない台地状となることである。また、登録意匠Aは、基本的構成態様の分布範囲が認められる領域の中心に位置しない。

さらに、基本的構成態様の分布範囲の全貌を認定することは不可能ではないかと考えている。基本的構成態様は具体的な形態から取得される視覚情報の「見出し」と考えられるため、「見出し」から形態を生成することは理論的には可能であっても、そのすべての形態を生成することは不可能だからである。

しかし、基本的構成態様の分布範囲を明確にできないことをもって不足であると考える必要は無い。一の形態の基本的構成態様と他の形態の基本的構成態様が一致するか否かという判断は常に可能であり、意匠の評価においてはそれで充分だからである。この点については後述する顕在化理論により詳しく説明する。

基本的構成態様の分布範囲において特徴的なことは、その範囲が後述するプロトタイプの分布範囲よりも非常に広いということである。例えば、典型的なコップの基本的構成態様の分布範囲には、無数のプロトタイプが包含されていると考えてよい。無数のプロトタイプは、それぞれ異なる美感を有する。そうすると、それらを全て包含している基本的構成態様は、特定の美感を備えていないことになる。

(2008/1/4)

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