3 最低情報量で形成される基本的構成態様

基本的構成態様は、最低限の情報量で構成されるという拘束を受けている。例えば、10個の単純形態(単純形態とは、例えば、正方形や立方体などの幾何学的図形)から構成されている物体の基本的構成態様は、その単純形態の10倍の情報量にはならない。単純化される結果として情報量は削減されてしまう。この場合、最低限の情報量を超過しないように視覚情報の統合が行われた後、基本的構成態様が把握される。このような視覚情報の統合は、ゲシュタルト心理学の知覚の体制化からも伺うことができる。

多数の単純形態から構成されている形態は、各単純形態の面と面の関連性から抽出される基本的構成態様の総和ではなく、単純形態間の関連性に置き換えられてゆく。この情報量は、普段目にしている複雑ではない形態の面と面の関連性の情報量レベルまで縮減されるということである。

話が逸れるが、この最低情報量による拘束は本来的には脳の並列分散処理に基づくものであると考えられる。並列分散処理とは、多数のモジュールで情報を処理するため、視覚情報がモジュールの要求する要素に分離されることを前提とする。もちろん、何から分離されたものかが分からなければ、その視覚情報を処理することはできない。従って、並列分散処理のベースとして「見出し」が必要になる。この「見出し」の情報量は最低限に抑えられており、そしてその「見出し」の役割を負っているのが基本的構成態様の本質であろう最低限の視覚情報となると考えている。

さらに言えば、基本的構成態様の「見出し」としての性質は、言語情報と視覚情報を結び付ける役目を果たしているのではないか。例えば、物品の名称は言語情報であるが、この名称は基本的構成態様に関連付けられている。もし、物品の名称が具体的な形態(物品そのままの状態を示す視覚情報)と直接結び付けられていたら、形態が少しでも異なると物品の名称が分からなくなってしまう。基本的構成態様が一致していれば、プロポーション等などが異なっていても問題なくその物品名を言い当てることができる。

(2008/1/4)

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