3 類似の円盤

図1は、意匠の類似範囲の説明を行う場合に、よく用いられる円盤の図形である。線図の円の中央点Aが登録意匠であり、その円の内側全部が登録意匠Aの類似範囲であると説明される。そして、事例B1、事例B2、事例B3という3つの意匠は、それぞれ円盤内に位置しているため、登録意匠Aの類似範囲に含まれており、従って、登録意匠Aの意匠権を侵害すると説明される。また、事例Cの意匠は、円盤の外に位置するため、意匠権を侵害していないなどと説明される。


図1

この類似の円盤を眺めていると、中心傾性を示しているように感じられる。事例B1、事例B2、事例B3、事例Cの順に登録意匠Aから遠ざかった位置にあるからである。一番典型的な事例が登録意匠Aであり、以下、Aを典型例としている様々な特徴を多く備えている順に、事例B1、事例B2、事例B3が存在する。そして、典型的である登録意匠Aが備えている様々な特徴をほとんど備えていないのが事例Cになると考えられる。

中心傾性をもっとよく表現するのであれば、この類似の円盤は図2に示すような円錐体を考えた方が理解しやすい。円錐の頂点(上記の例では登録意匠Aの位置)を最高点とする円錐の斜面が「中心」への「傾性」を示していると見立てるのである。こうした従来の意匠の類似範囲の捉え方を、「プロトタイプの単独単一構造」と呼ぶことにする。


図2

(2008/1/4)

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