2 概念に関する学説

古典的な見解として、概念は定義的特徴によって構造化されているとする説がある。例えば、「偶数」という概念は「等しく2つに分割できる」という特徴をもつ。そして、すべての概念は「偶数」の例のように定義的特徴で構成されている、とする(1)。

明解な考え方だと思うのだが、多くの欠点があるそうだ。その一つとして、概念のすべての事例が同等にその概念の良い事例にはならないことがあげられている。例えば、コマドリはペンギンよりも「鳥」の概念の事例としてふさわしいと判断される。ある概念の特徴は、その概念の事例のすべてが持っているとするこの考え方に合致しない(2)。

この古典的な考え方の弱点を克服するために、プロトタイプ理論という考え方が生み出された。この理論は、概念が典型例を中心に体制化されているとする考え方である。例えば、コマドリは典型的な鳥といえるが、ダチョウは典型的な鳥ではない。コマドリは鳥のプロトタイプ(典型例)と多くの特徴を共有しているからである(3)。

さらに、プロトタイプ理論では概念のレベルの違いについて説明できる。例えば、ジャーマンシェパードの場合、「ジャーマンシェパード」は下位概念であり、次に、「犬」が中間の基本レベルであり、最後に、「哺乳類」が上位概念になる。何故、中間レベルが基本レベルと呼ばれるかというと、基本レベルの概念には心理学的な特権があり、例えば、それらは最初に学習され、普通、このレベルで命名されるからである(4)。

このプロトタイプ理論におけるプロトタイプは、中心傾性を持つ。すなわち、典型例であればあるほど、その概念の中心に位置するということである。

(1) M.W.アイゼンク編/A.エリス・E.ハント・P.ジョンソン−レアード編集顧問/野島久雄・重野純・半田智久訳「認知心理学事典」(新曜社、1998年)37頁
(2) アイゼンク前掲(1)37頁
(3) アイゼンク前掲(1)44頁
(4) アイゼンク前掲(1)38頁

(2008/1/4)

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