6 視覚と脳

脳では視覚情報の処理が行われている。この処理は網膜の情報が視覚野に送られ、さらに視覚野から視覚連合野、最後に視覚連合野から高次連合野へと、三段階の処理がなされる。視覚野では輪郭の断片、色の識別、対象の動き等、形の知覚に必要な基礎的なデータが抽出される。さらに、視覚連合野では高度な形態の分析が行われる。最後の高次連合野では、その視覚により知覚されたものが、他の感覚や言語的な情報と連合され認知される。このように、網膜に到達した光の情報の処理が認知にまでたどり着くまでには、このような段階的な過程を経るのである。

さらに、脳は一箇所の領域で視覚情報を処理しているわけではない。上記の視覚野、視覚連合野、高次連合野は特定の部位に存在するが、それらはその処理の中枢といえる部位であり、他の部位も協働する。視覚情報が処理されている場合、脳全体の50%以上が活動するといわれている。それほど、視覚は、脳を働かせているのである。

また、脳の情報処理は並列分散処理という方法によって行われている。同時に複数のユニットが働いている。これらは高度なネットワークにより連合されており、単一ユニットによる処理では到底及ぶことができない超高速の情報処理を可能にしている。これらのユニットは、例えば、色彩の知覚や、形の知覚、動きの知覚等毎に無数の分業化がなされている。この分業化のおかげで、我々は、それが物体の表面に描かれた線ではなく、物体のエッジであると認知できるのである。

模様と形状が異なるというのは当然のことと考えられているが、実は脳のこのような分業体制がもたらす認知処理によって、初めて可能になっている。色彩もしかりである。形態は、形状単一、形状と模様の組み合わせ、形状と色彩の組み合わせ、形状と模様と色彩の組み合わせ等と説明されているが、本来的には、物体を認知している脳のシステムに依存している定義に過ぎない。脳が、形状と模様を分離できないような認知構造しか持たないのであれば、形態の定義は異なったものになる。

(2008/1/4)

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