2 統計的手法による類否判断

類否判断の実務の指針としては、宮滝氏が明らかにしたような統計的手法が存在する。この統計的手法は、図1(1)に示すような基本的構成態様と具体的態様の関連性に注目して類否を決定するというものである。この表によると、基本的構成態様が共通する場合には、原則として両意匠は類似するということになる。


図1

例えば、上記の乱れ箱事件では、形態要素の対照表の(1)に記載されている「上部に脱衣籠を有する本体、及び、2個の提手付き洗濯籠の三者により不可分一体的に構成」が基本的構成態様であり、この基本的構成態様が特徴的であるゆえに両意匠は類似するということになる。

以下、この表に関する宮滝氏の説明文をそのまま引用する。
「意匠の構成態様の分説から形態の類否を求める試み
次の表は筆者が意匠の類否について講演した中で使用したものであるが、意匠の類否を判断する前提となる要旨認定において、常套的手段となっている基本的構成態様と具体的態様に分説する手法に関し、それぞれ分説された要素が特徴的であるか、極めてありふれているかに分説し、それぞれがどのような組み合わせになったときに、どのような結論に結び付くかを示したものである。判決を分析してこの図にあてはめると一応の結論が求められる。しかし問題は、基本的構成態様と具体的態様の間の線をどう引くかということにある。また物によっては必ずしも基本的構成態様と具体的態様に振分けることになじまないもの(例「織物地」)もある。しかし、意匠の類否判断を理論的に求めるための試みを続けることは、意匠制度が広く利用されるために欠かせないことであろう。」(1)

尚、このような統計的手法による類否判断が可能なほど、意匠の類否判断の基準は実務上固まっている。意匠の類否判断が、個人的な感性に左右されるようなものではないということである。

(1)宮滝恒雄著「意匠審査基準の解説」(発明協会、1997年)140頁

(2008/1/4)

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