6 2種類の類似範囲

上述した乱れ箱事件の場合、登録意匠の類似範囲にイ号意匠が属する、即ち、両意匠は類似すると判断された。一方、仮想の3つの公知意匠が存在する場合には、登録意匠の類似範囲にイ号意匠は属せず、両意匠は類似しない。これを登録意匠の類似範囲を円として図解すると図1のように示すことができる。なお、赤い点が登録意匠を、黒い点がイ号意匠を示している。


図1

XY座標面に各意匠の形態を特定の座標として示した場合、乱れ箱事件の場合も仮想の3つの公知意匠が存在する場合も、登録意匠とイ号意匠の座標位置は変らない。異なっているのは、赤い円で示されている登録意匠の類似範囲だけである。

図1に示されている図解は、意匠の類否判断において非常に重要なことを物語っている。意匠の形態の類似範囲は、公知意匠の存在の仕方により、広くなったり狭くなったりするということである。基本的構成態様が新規であった場合には類似範囲が広く、基本的構成態様がありふれている場合では類似範囲が狭くなるのである。

XY座標面に対して垂直なZ軸(このZ軸は視覚的効果を示している)を想定してみると図2のように図示することもできよう。


図2

図2によれば、基本的構成態様が新規である場合には視覚的効果が高いため、それに伴って類似範囲が広くなり、一方、基本的構成態様がありふれている場合における具体的態様に基づく視覚的効果は低く、それに伴って類似範囲は狭くなると説明することができる。

このように、登録意匠の類似範囲が公知意匠の存在によってその類似範囲が広くなったり狭くなったりするのであるが、重要なことは、登録意匠の特徴が基本的構成態様にあると認定されるのか、それとも具体的態様にあると認定されるのかということである。このことから理解できるのは、意匠の形態の類否判断には2つのパターンがあるということである。

(2008/1/2)

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