2 部分意匠と部品の意匠

部分意匠の本質をさらに明瞭にするため、部分意匠と部品の意匠の関係を検討する。

部品の意匠は、完成品である物品の一部分を構成するものである。但し、独立して取引対象とされなければならない。部品そのものは物品性を備えていることになるが、完成品である物品の未完成状態であるとも捉えることができる。このように考えると、完成品と部品というのは物品の完成・未完成に関する概念である。

一方、部分意匠は、「物品」の完成・未完成という概念ではなく、全体意匠における「形態」の完成・未完成という概念で捉えることができる。全体意匠が形態の完成状態であり、部分意匠は未完成状態と考えることが可能である。

部品という概念は理解しやすいが、実のところ、部品がその完成品に占める範囲というものは製作者の技術的設計事項である。即ち、製作者が自由に決定することができ、完成品のどの範囲までを一部品という物品として分離させるかは社会通念上決定されるものではない。このため、法的な見地(客観的な見地)から考えてみると、出願人がその範囲を自由に決定できる部分意匠と、製作者がその範囲を自由に決定できる部品とは、市場において独立して取引対象とされるものであるかという要件を除き、いずれも恣意的に決定できる点で共通する。部分意匠と部品の意匠がオーバーラップ場面では、このような点を理解しつつ評価を行うべきであろうと考える。

(2006/2/13)


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