7 実線部分の形態に関する判断(第3段階)

実線部分の形態に関する判断には、従来の類否判断の手法を用いることができる。従来の類否判断の手法として、基本的構成態様と具体的態様という概念が用いられてきた。しかし、具体的態様はともかく、基本的構成態様は物品全体から認定されるため、当該概念を実線部分の形態にそのまま適用することはできない。即ち、基本的構成態様とは物品全体のデザイン的骨格と呼べるものであるため、物品の一部分である実線部分のデザイン的骨格を表す概念としては不適当だということである。

ここで、実線部分の形態のデザイン的骨格を示す概念として部分構成態様という言葉を用いることにする。これは、部分意匠制度導入後において、基本的構成態様と具体的態様という概念の比較を行うと、基本的構成態様という言葉は、「基本的」という言葉よりも「構成」という言葉にウェイトをおいて把握しなければならない概念であると考えるからである。但し、部分構成態様の認定がそぐわない場合も存在することを付言しておく。

従って、実線部分の形態に関する判断作業を実務的に列記すると、@部分構成態様と具体的態様の認定、A部分構成態様と具体的態様のそれぞれの共通点と差異点の認定、B当該共通点と差異点の評価、C実線部分の形態の類否判断という手順になる。

繰り返すまでもないが、破線部分から従来の基本的構成態様を抽出してはならない。何故ならば、破線部分は揺動しているため従来の意匠の特定作業が不可能であり、このような破線部分から物品全体のデザイン的骨格を把握する基本的構成態様を抽出することは不可能であること、また、特定不能である破線部分から従来の基本的構成態様を認定することは、長年にわたり蓄積されてきた基本的構成態様の認定手法に悪影響を与える可能性があるからである。

尚、実線部分の形態は類似範囲を有する。従って、例えば、上記部分未完結型(特徴型)の場合、図4に示す境界域Aもある程度この類似範囲から由来する幅を持つことが観念できる。従って、上記揺動範囲は、実線部分と破線部分との関連性をある程度柔軟に解釈して認定する必要があることが理解できよう。

(2006/2/13)


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