6 共通性の判断

次に、上記揺動範囲の認定から「その物品全体の中に占める実線部分の位置、大きさ」の共通性(適合可能性)の有無を認定する。

最初に、破線で示されている部分に対して実線で示されている部分がどのような関係になっているかということに着目する。上記のカメラの例において、この実線で示されている部分は、カメラの正面パネルと上面パネルの表面に付着するように位置し、また、その実線で示されている部分はカメラの正面パネルや上面パネルよりも小さいということが認定できる。これは、破線部分が揺動しても影響を受けていないからである。

図1

従って、図1が登録意匠であり、図2のカメラが実在する場合を仮定してみると、実線部分はその位置において「カメラの正面パネルと上面パネルの表面に付着するように位置する点で共通する」という結論になり、また、大きさにおいて「カメラの正面パネルや上面パネルよりも小さいという点で共通する」という結論になる。この結論は、すでに同一性概念や類似概念を捨象した上で得られた結果であるから、残された概念は、共通するか、共通しないかという二者択一の概念のみで判断する他はない。これを「共通性の判断」と定義する。

図2

ここで、上記認定方法と対比する意味において、「その物品全体の中に占める実線部分の位置、大きさ」を従来の実務的な手法を用いて判断した場合について説明する。

上記のカメラの例において、図1の実線部分は、「物品の全幅を100とした場合、正面パネルの左端から約22乃至72の位置に延在し、また、上面パネルの左端から約36乃至72の位置に延在する。」という認定を受け、また、図2の実線部分は、「物品の全幅を100とした場合、正面パネルの左端から約50乃至100の位置に延在し、また、上面パネルの左端から約60乃至100の位置に延在する」という認定を受ける。

このため、両実線部分の位置が異なると結論されることになるであろう。しかし、このような認定方法は、破線を実線のように物理的に特定されたものとして捉え、破線部分を部分意匠の必須の形態要素としてしまう点で部分意匠の本質に反し、誤った認定方法であることが理解できるであろう。

(2006/2/13)


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