6 模様型

図1に示すティーシャツの模様は、模様型の典型例である。模様型の揺動範囲の認定は、上記全体型や部分型類型とは異なるアプローチを用いて考える必要がある。意匠法は、プロダクツデザインの保護という観点から、形態と物品の不可分性を要求する。そして、物品は必ず形状を有するため、模様は形状と結合されている場合にのみ法の保護を受けることができる。これは、物品性を備えていない単独の模様のみを保護対象としないことを意味している。この鉄則は、部分意匠においても貫徹されなければならない。このため、模様型の部分意匠では、模様そのものが部分意匠の対象ではなく、模様とその模様が表されている部分の形状(上記ティーシャツの例の場合、模様が表されているティーシャツの生地部分)とを部分意匠の構成要素として認定しなければならない。


図1

従って、模様が表されている部分の他の部分に当該模様を表すと(上記ティーシャツの例の場合、例えば、左胸部分から腹部中央に模様を移動させると)、模様が表されている生地部分(左胸部分)とは別の生地部分(腹部中央)と当該模様が結合することになる。即ち、この生地部分(左胸部分)は、左胸という「位置」にその「大きさ」で設けられていることにより特定されているのであり、故に、上記の場合には物品性の要件を満たさないことになる。このような理由から、模様型の場合、破線部分との関連性における位置と大きさは限定的に解釈されなければならず、揺動範囲は上記部分未完結型(非特徴型)のように狭小な範囲となる。

タイプ別部分意匠類否論によれば、模様型の模様部分に創作的寄与が認められる場合には、タイプ1の部分意匠と認定される。このため、登録部分意匠の配設関係(位置、大きさ、範囲)が異なっていても美感への影響が少ないと判断され、図1の実線部分の模様がTシャツの背中部分に配設されているイ号意匠と、図1の部分意匠は類似すると判断されることになる。なお、このタイプ別部分意匠類否論では、「部分自体に創作的寄与が認められる部分意匠」と、「配設関係に創作的寄与が認められる部分意匠」とを区別しているが、部分自体に創作的寄与が認められ、かつ配設関係に創作的寄与が認められる部分意匠の場合、どのような取扱になるのかは不明である。また、「創作的寄与」の判断基準が示されていないため、独立説と同様に実務において混乱をもたらす可能性が高い。

独立説によれば、破線部分の形態は説明目的とされているが、模様の位置や大きさ等がどの程度考慮されるのかは不明である。このため、図1の実線部分の模様がTシャツの背中部分に配設されているイ号意匠と、図1の部分意匠が類似するのかは不明である。しかし、独立説によればタイプ別部分意匠類否論と同様の結論を導きやすいと考える。

要部説によれば、破線部分に基づいて実線部分の位置、大きさ、範囲を認定して類否判断を行うことになるため、図1の実線部分の模様がTシャツの背中部分に配設されているイ号意匠と、図1の部分意匠は非類似であると判断されることになる。この結論は揺動説と同様である。

(2006/2/11)

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