5 部分未完結型(非特徴型)

図1に示す運動靴は、部分未完結型(非特徴型)の典型例である。楕円形の膨出自体の形態はありふれたものであり、特徴的であるとは言えない。このような場合、実線で示されている楕円形の膨出自体の形態のみに着目すると、意匠法第3条2項により拒絶される可能性がある。


図1(USP. D395347)

このような非特徴型の部分意匠は、実線による形態が破線で示されている全体の形態のどの位置に、また、どの程度の大きさで設けたかという点に保護価値を認める余地がある。このように解した場合、非特徴型は実線部分と破線で示す全体との形態的な関連性が極めて高いため、揺動範囲に含まれる揺動要素は限定され、故に揺動範囲は狭小なものとなる。

この部分未完結型(非特徴型)に関する揺動説と同様の結論を導く学説として、タイプ別部分意匠類否論がある(1)。この説は、部分意匠を2つのタイプに分類し、タイプ1として「部分自体に創作的寄与が認められる部分意匠」と、タイプ2として「配設関係に創作的寄与が認められる部分意匠」とに分類する。そして、タイプ1の部分意匠については、部品の意匠と同様に、登録部分意匠の配設関係(位置、大きさ、範囲)が相手方意匠と異なっていても、美感への影響が少ないため、類似関係が成立する可能性が高いとする。また、タイプ2の部分意匠については、配設関係(位置、大きさ、範囲)が要部となっているので、登録部分意匠が全体において占める位置とそれに対応する相手方意匠の部分の位置が異なる場合には、類似関係は否定される傾向が高くなるとする。部分未完結型(非特徴型)は、このタイプ別部分意匠類否論によると、タイプ2の部分意匠に属することになろう。

独立説はこの部分未完結型(非特徴型)においても部分未完結型(特徴型)と同様の問題を抱えている。破線部分が靴の部分的形状を説明していると考えるのか、それとも靴のかかと部分の形状を説明していると考えるべきなのかが不明である。独立説は部分意匠の恣意的な評価を許すということに注意しておく必要がある。

要部説は破線部分に基づいて実線部分の位置、大きさ、範囲を認定して類否判断を行うことになるため、この部分未完結型(非特徴型)においては妥当な結論を導きやすいであろう。
(1) 青木博通「タイプ別部分意匠類否論」DESIGN PROTECT誌2001年No.50Vol.14-3

(2006/2/11)

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