4 部分未完結型(特徴型)

部分未完結型とは、上記機能完結要件を満たさない場合、上記形態完結要件を満たさない場合、さらに、上記機能完結要件及び形態完結要件の両要件を満たさない場合が該当する。この部分未完結型は、さらに、実線で示されている部分意匠が特徴的である特徴型と、ありふれている場合の非特徴型の2種類に分類される。

図1に示す容器の部分意匠は、実線部分が特徴的であるため部分未完結型(特徴型)の典型例である。


図1(USP.382479)

この図1に示す容器の部分意匠は、図2に示すような範囲で破線が揺動する。実線部分と破線部分との境界域Aではそれぞれの部分が相互に不可分な関係となっている。このため、境界域Aにおいて破線はほとんど揺動しない。一方、領域B、領域Cと、境界域Aから位置的に離れるに従って、破線は実線部分との関連性が弱くなり、揺動範囲が広くなるのである。即ち、領域Bの形態は境界域Aの形態を維持するために、破線で示されている形態とかけ離れた形態を揺動範囲に含めることができない。しかし、領域Cのように境界域Aから位置的に離れている場合には、当該領域の揺動範囲を広く認定しても、境界域Aにおける実線部分と破線部分との関連性は維持されると捉えるのである。


図2

部分未完結型(特徴型)は要部説が想定している部分意匠の典型例であると考えられる。そして、要部説によれば実線部分の位置、大きさ、範囲を認定した上でイ号意匠との類否判断が行われる。しかし、実線部分の位置、大きさ、範囲をどの程度厳格に判断するかが不明であり、実務においては根拠のない水掛け論に終始する可能性が大きく、部分意匠の類否判断に対する指針を与えることには失敗している。

独立説は破線部分を「説明目的」であるとしているが、この破線が「容器の部分的な形状」を説明」していると考えるのか、それとも「容器の側面形状を説明」していると考えるのかにより結論が正反対になってしまう。実線部分の形態が容器の底部近傍に配置されているイ号意匠が存在する場合、「容器の部分的な形状が説明されている」と解釈するなら類似と判断される可能性があるが、「容器の側面形状が説明されている」と解釈するならば非類似となるであろう。要部説と同様、独立説も実務において指針を与えるような学説ではない。なお、このような独立説における解釈の混乱は米国における実務においても見られ独立説の限界を示している。

(2006/2/11)

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