2 全体型

全体型は、後述する部分完結型、部分未完結型(特徴型)、部分未完結型(非特徴型)の三者を包含する部分型類型と対立する概念である。即ち、全体型に分類される部分意匠は、物品全体の形態(多くは基本的構成態様)を特徴づける物品の輪郭を実線として示したものであり、当該輪郭の全部又は一部が破線で示されている部分型類型と区別される。

ここで、「物品全体の形態を特徴付ける物品の輪郭」とは、例えば、図1に示すキーボードの場合、破線で示されている複数のキーからなる操作部もキーボードの輪郭の一部を構成するが、この操作部の輪郭は当該キーボードの「全体の形態を特徴付けている」とは認定しない。このように、全体型は基本的構成態様のうち主体をなす輪郭が実線で示されている必要がある。


図1(USP. D379179)

従来の類否判断において、特徴的な基本的構成態様が共通すれば具体的態様(特徴的である場合を除く)が異なる場合でも類似範囲に含まれるという解釈がなされてきた。しかし、基本的構成態様の認定には、「基本的構成態様と具体的態様の間の線をどう引くか」という問題がある(1)。全体型の部分意匠は、このような基本的構成態様の主体をなす輪郭を実線で示すことにより、基本的構成態様と具体的態様の不明確な線引きを予め明確にしているものと捉えるのである。

全体型の類否判断においては、従来の基本的構成態様の認定方法がスライドして適用できるが、上記のように実線部分は基本的構成態様の主体ではあるものの、基本的構成態様そのものではないことには注意を払う必要がある。尚、この全体型の破線の揺動範囲は、後述する部分型類型に見られるような特殊な性格を有するものではなく、その性質を異にするものである。

図1に示すキーボードの揺動範囲に含まれるキーボードとして図2に示すようなキーボードが考えられる。この図2に示すキーボードのような3分割のキー群の配置が、図1に示す登録意匠の意匠登録出願前に公知であった場合には、こうしたキー群の配置を図1に示すキーボードと組み合せても違和感がないからである。


図2

(1)宮滝恒雄「意匠審査基準の解説(改訂増補版)」(発明協会、1997年)140頁。

(2006/2/11)

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