4 揺動説の立場と特徴

揺動説は破線を固定的に捉えない点で要部説とは異なり、また、揺動範囲という概念により破線をある程度限定的に解釈する点で独立説とは異なる。さらに、揺動説は揺動範囲という概念を用いることにより、後述する類型化された部分意匠の様々なケースにおいて、要部説と同様の結論に至ったり、また、独立説と同様の結論に至る場合がある。

揺動説の特徴を列記すると以下のようになる。

@部分意匠が出願実務から生じた「出願人サイドで考案された表現方法」であることから、「意匠の特定作業」という実務的な観点によりその本質を無理なく捉えることができる。

A意匠の類否判断は視覚により判断されることから、破線を揺動させることにより破線の意味をビジュアルに理解させ、意匠法及びその実務に詳しくない者にも共通した認識を容易に持たせることができる。

B実線のみで示されている従来の意匠に関するプラクティスを支えてきた様々な概念、例えば、意匠の同一、類似、非類似、意匠の要部、基本的構成態様(詳しくは後述する)、具体的態様等、を部分意匠出願において実線で示されている部分にそのまま適用でき、一方、従来のこのような概念の変更を要しない。

C今後、発展し続けるであろう部分意匠の取扱いに柔軟に対応できる解釈の自由度を有し理論的な破綻をきたす可能性が低い。

(2006/2/11)

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