2 揺動説

私は、破線で示された部分の法的性質を明らかにする揺動説を提唱する。この揺動説とは、図面に示されている破線が固定されたものではなく揺れ動くもの(waver)と捉える考え方である。

上述したように、部分意匠における破線という表現方法は実務的な要請から発生したものであるため、部分意匠の本質を探るためには、まず、多数の意匠公報に示された部分意匠の実線と破線の関係を観察する姿勢が必要である。

揺動説は、以下のような作業から生まれたものである。即ち、部分意匠の意匠登録公報に黒色の破線が描く形態とは異なる公知の形態を赤色の破線で書き加え、黒色の破線と赤色の破線が、夫々、実線で示されている部分意匠の形態に対し違和感を与えることなく表示していることを確認する。さらに、他の色で他の異なる公知の形態を書き加えてゆき、それぞれの色で書き加えた公知の形態がやはり違和感を与えることなく表示していることを確認してゆく。

しかる後に、複数の同一サイズの紙を用意し、その内の1枚に実線部分のみを描き、他の紙にはコピーする。1枚目の紙には黒色の破線で表した一の公知形態を書き加え、2枚目の紙にも赤色の破線で表した他の公知形態を書き加える。以下、3枚目、4枚目…にも様々な色で表した破線で示すそれぞれ異なった他の公知形態を書き加えてゆく作業を行う。これらの紙を高速で捲ってゆくと、アニメーション(動画)のように破線が揺れ動くのである。もちろん、部分意匠は各紙にコピーされているため、その実線の位置が変動せず全く動かない。揺動説という名称は、この破線部分が揺れ動くという視覚的な印象から命名されている。

(2006/2/11)


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