3 要部説と独立説の実際

要部説と独立説を検討すると、理論上では独立説に分があると言わざるを得ない。しかし、理論上優れた学説が実務においても優れた学説であると簡単に結論付けることはできない。

要部説と独立説では理論上大きな隔たりがある。しかし、部分意匠以外の部分を示す破線をどの程度考慮するか、即ち、実線で示されている部分と破線で示されている部分との関連性(以下「破線部分との関連性」とする)をどの程度考慮するかという実務的な場面においては、この隔たりは小さなものになる可能性がある。

個別具体的な部分意匠を把握する際に、破線部分との関連性をどの程度考慮するかという点では、両説とも明確な基準を示していない。例えば、破線部分は「説明目的」であるとする独立説を採っても、イ号意匠がその「説明」からどの程度外れると非類似(クレーム外)となるのかは全く不明である。この「説明目的」を厳格に解釈すれば、そこから得られる結論は、破線部分との関連性を重視するであろう要部説の結論と近いものになるであろう。

一方、要部説においても「破線部分の形態については出願人(権利者)は要部ではないと主張しているのだからその影響を小さく評価する」と考えるならば独立説との差異は小さくなろう。このため、要部説と独立説は共に実務上の明確な指針を与えることができていない。


(2006/2/10)

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